Child Care House / 下町のような児童養護施設

育児施設モデル模型
Location:熊本市中央区古京町
Area:674㎡
Cost: -
Completion:企画設計 2014
Contractor:-

熊本市中央区古京町 児童養護施設計画

この建物は、熊本県熊本市中央区古京町の熊本城付近で計画中の児童養護施設のグループホームです。「小さなコミューン」をコンセプトにデザインしました。建物の構成や特徴を以下のポイントにまとめましたので、順を追って紹介していきます。

 

全体の配置構成

建物中心部に子供達や、スタッフ達が過ごす11個に分解された小さなユニットブロック(プライベートスペース)を敷地中央に散りばめながら配置し、それを取り囲むように水回りや学習・談話室・厨房などのブロック(パブリックスペース)を配置しています。敷地外周部をパブリックなスペースで囲うことで、建物全体のセキュリティーやプライバシーに配慮した計画となっています。

 

11個のバラバラに分解された箱

この計画では我々が普段から住まう住宅のスケールに近づけるため、建物を1つの大きな箱ではなく11個の小さな箱に分解しています。箱は互いにずれながら配置されているので、それぞれの箱が身を寄せ合って集まる形は、まるで昔から存在する町の集落のような雰囲気を創り出してくれます。

現代では共同で住む形といえば、1つの建物内に同じ居室を横に並べただけの空間が主流となっていますが、我々は一人一人の空間が1枚の壁だけではなく、外部空間という緩衝空間を挟むことによって、そこに住まう人々が、より緩やかにつながっていくことを目指しています。

 

外部空間の考え方

敷地に対して1つの大きな建物を配置した場合に大きな庭が確保できますが、そこはただの広い空間となるだけで、庭と考えることが難しい気がしました。この建物では、大きな建物を解体し、小スケールの箱を敷地内に散りばめているので、おのずと外部空間のスケールも数ヵ所に分解され小さくなります。しかし、外部空間のスケールを小さくして随所に設けられたことで、より身近に感じてもらうことを目指しています。

そこは時にみんなが共同で利用する裏道や広場になったり、時に自分の部屋の延長として使える庭になったりと、みんなのものになったり、自分の部屋であったりと、つかず離れずの距離を生み出すことができるようになります。

 

建物をずらしながら配置することによりいろいろなスペースが生まれます。生まれたスペースは裏道、広場、庭になり、そこに、たくさんの木、植物を植えることでピクニックをしたり、野外教室を開いたり、木陰でくつろいだり、子供か裸足で自由に走れ回れるスペースを提供します。こういった建物は外からだととても近寄りがたい閉塞的な施設になりがちですがコモンスペースの建物はガラス壁を用いることによって外から見ても開放感が得られるように配慮した。現代ではなくなりつつある昔ながらのモ下町モをイメージし、そこに住まう人々の共同スペースを形成することにより、現代の情報内のつながりではなく下町人情のような人対人の関係を学べる場所になればと思っています。

1カ所にまとめられた水回り空間

近年建設された学校や福祉施設などの水回り空間は、普段長い時間を過ごす教室や居室を日当たりのいい空間として採用することで、薄暗く閉鎖的な場所になりがちです。しかしこの建築は水回り空間を大きなガラス張りの空間の中に入れ子にして配置することで、今までにない明るく開放的な空間として水回りを創り出すことができます。ガラスの箱と水回り空間との間の残余空間は、ガラス張りの通路になっていて、水回り独特の陰湿な雰囲気をなくしています。

キッチンダイニングも同様にガラスで囲まれているため、今までは近づきにくいキッチンスペースも、より身近に感じられるようになっています。

また1つの住戸に一つの水回りではなく、水回りという空間を共有することで建物全体の空間に余裕ができ、余った空間分をより多くの居室空間として活用することもできます。

 

自分に合った場所を見つけられる建築

この建物にはバラバラに配置されている小スケールのスペースと同時にみんなが使える共有の談話、学習スペース・キッチンダイニングが設けられています。寂しい時は共有空間で、勉強や友達と談話することもできますし、一人になりたいときは、散りばめられた住戸に行くこともできます。人それぞれが自分の気分によって、居場所を探すことができるようになるため、より子供達の個性を育める空間になると考えています。

 

ガラス張りの開放的な空間

11個の小さな箱を取り囲むように配置された敷地外周部の空間は、ガラス張りの空間としました。近年まで児童養護施設などの福祉施設は、セキュリティーに対する配慮から、頑強なコンクリートや鉄骨の壁で覆われた閉鎖的な建物が多く、周囲に近寄りがたい雰囲気を出していましたが、この建物では外周部をガラス張りにして、街に溶け込む近づきやすい開放的な建物としました。

外周部のガラスが建物の透過性を高め、建物の奥まで見通すことができるだけでなく、周囲の景色を映し出すその姿は、近づきやすく開放的な、今までにない新しい児童養護施設を創り出してくれます。

 

最後に

この建物は部屋から部屋へ移動するときは外を必ず通ることになります。これは機能性という視点では、厳しい意見を頂くこともあるでしょう。しかしそれと引き換えにこの建物は自然の変化や移ろいなど、我々にとってかけがえのない価値を日常に与えてくれます。この社会がどんなに発展しようと、自然を常に身近に感じられる空間が今の時代には必要なのではないでしょうか。

 

 

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